イモリの再生能力の秘密について、興味深い事実がありますね。
第一に、イモリは他の両生類とは異なり、成長しても活発な幹細胞を持っています。これにより、心臓や脳などの全ての臓器を何度でも再生できるのです。この特性から、イモリは再生医療の研究対象として注目されています。一方、他の両生類(カエルやサンショウウオ)は幼生時には幹細胞の働きが活発で再生能力が高いものの、成長すると幹細胞の働きが衰え再生能力が弱まるのが一般的です。例えば、カエルは手を切断しても指まで再生することはできませんし、トカゲも再生は尻尾のみで、骨は再生できず一度きりです。
第二に、イモリの特徴的な再生能力は、脱分化という現象によるものです。皮膚、骨、筋肉などの幹細胞は通常分化して体の部位を形成しますが、イモリだけは脱分化という逆の過程を行うことができます。つまり、分化した細胞が元の幹細胞に戻ることができるのです。この特性により、腕の筋肉が脱分化して筋肉幹細胞に戻り、指や足など他の別の筋肉に再び分化することが可能です。
第三に、この脱分化の仕組みは「NEWTIC1」という遺伝子によって制御されていることが分かっています。NEWTIC1は赤血球を利用して再生に必要な物質を運び、分化や脱分化を制御していると考えられています。
このようなイモリの再生能力は、再生医療への応用が期待されています。例えば、受精卵まで戻せるiPS(多能性幹細胞)とイモリの脱分化を組み合わせることで、驚くべき再生医療技術の可能性が広がっています。
最後に、イモリのゲノム分析によれば、イモリの全ゲノムの長さは人の7倍以上あり、多くの繰返し配列を持っていることが再生に関与している要因の一つであるとされています。
イモリの再生能力に対する研究はまだ進行中であり、その仕組みを解明することで、将来的に再生医療の発展に大きな影響を与えることが期待されています。