施工後のモニタリングの必要性(軟弱な粘性土地盤上の盛土に対して)

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盛土造成工事は、一般に野外の自然条件のもとで比較的長期間にわたって行われ、気象条件にも左右されやすい地盤と土を対象にした工事である。詳細な調査・設計に基づく施工計画であっても、施工中に起こり得るすべての事態を完全に予測することは難しい。特に軟弱地盤上の盛土の場合は、施工中における盛土のすべり破壊や側方地盤の変状などの危険を伴うとともに、施工後も大きな沈下が長期間継続し、予想以上の不同沈下を生じることも多く、当初計画通りの工事を完成することは容易ではない。工事の実施に当たっては、常に地盤の挙動を監視し解析、異常が発見された場合には、早急にその原因を究明して適切な対応を図るとともに、施工の進捗に応じて施工計画、工法及び設計の修正又は変更を行うことが大切である。

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軟弱な粘性土地盤上に盛土が施工される場合、一般的に問題となる現象は「すべり破壊」と「圧密沈下」である。また、盛土の計画位置周辺に既設の構造物がある場合等では、施工時の振動・騒音・地盤変位が問題となる。これらは必要に応じて事前設計で検討評価され、その成果に従って現場施工が行われる。ただし、多くの指摘があるように、事前設計には「慣用計算法と実際のギャップ」、「地盤土性のばらつき」や「実績相関図等の間接情報からの推定精度」等による不確実性が含まれている。そのため事前設計で算定された安全率や沈下量等は、ある計算条件下の平均値あるいは代表値とみなすべきものと考えられる。したがって現場においては、事前設計での評価より安全側に現象が生ずる場合も、逆に危険側に現象が生ずる場合もありうる。

このような事前設計での不確実性に、現場で時々刻々得られる直接情報に基づいて対処する方法(あるいは直接情報を入手する方法)が、現場計測である。

軟弱地盤上の盛土における現場計測は、およそ次の2種類に区分できると考えられる。

・不確実性に対しては、事前設計段階で合目的性や経済性を損わない範囲での「安全側」の判断で対処し、現場施工は事前設計どおりに実施することを前提として行われる現場計測

・現場で得られる直接情報に基づき必要に応じて修正設計を行うことで不確実性に対処し、現場施工の最適化を求めることを目的として行われる現場計測

「土質工学における情報化施工研究委員会:研究報告書,土木工学会,p.5,1988」では、前者を観測施工、後者を情報化施工と呼んでいる。小規模盛土では前者が多く採用されていると思われるが、大規模盛土においては、「安全側」の判断は建設コストを大きく引き上げることになる。大規模盛土において、情報化施工が一般化しつつある背景は、そこにあるものと考えられる。

なお、直接情報をより積極的に得ようとする方法に、試験盛土がある。