透水と圧密の関係

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土質力学の教科書では、透水の章と圧密の章が分かれていて、それぞれを別物として扱っていいます。しかし、土の骨格と間隙水の相対移動という部分に着目すると、両者は同じものです。
一次元の水の流れ(現象)を考えることにして、土骨格に対して間隙水がz方向に見掛けの流速v(z,t)で相対的に流れている場合を想定します。骨格の圧縮ひずみをε(z,t)とすると、水の質量保存則は次の式で表せます。
∂ε/∂t=∂v/∂z   式5.2.1
ただし土は完全に飽和しているとします。間隙水が骨格のすき間を流れる際には、必ず間隙水が流れの向きに骨格に对して力(浸透力)を与えます。骨格の圧縮反力がこの浸透力とつり合っていて、その状態が時間的に変動しないならば、骨格のひずみ状態も時間的に変化せず、∂ε/∂t=0となります。この状態は透水の定常状態であり、式5.2.1より∂v/∂z=0であり、どこでもvは同じ値となります。この状態では、土の骨格を剛体と考えてよく、水が定常的に流れている状態です。一般に「透水」と言えば、この定常透水を指すのが普通であり、Darcy(ダルシー)の透水法則v=kiは、この状態でしかも層流である場合の間隙水の巨視的な運動方程式として代表的なものです。定水位透水試験は、この定常透水条件の下で実施されています。
浸透力が時間とともに変化すると、骨格が圧縮されて∂ε/∂t≠0となります。この場合にも質量保存則は成り立ちます。即ち、5.2.1式が飽和非定常透水を表現す式となります。
圧縮性を無視してよいケースでは右辺の透水性が強調され、非定常透水問題として扱われますが、逆に骨格の圧縮過程が大切となるケースでは、左辺の大きさが相対的に大きな問題になります。これが広い意味での圧密問題です。一般に「圧密」と言えば,静的外力によって土中の間隙水がしぼり出されて骨格が圧縮していくことを指しますが、その過程を支配する方程式の一つが5.2.1式です。外力は骨格の圧縮あるいは透水を生じさせる原動力としての境界条件として位置づけられます。即ち圧密とは、「非定常透水を伴う骨格の圧縮」のことです
以上のことを簡単に表現すると、不動の骨格に対する間隙水の移動(水が動く)が透水であり、間隙水のしぼり出しを伴う骨格の圧縮(骨格が動く)が圧密となります。